孔子は40にして惑わず、といっていますが、40歳を過ぎても迷い、悩むことはたくさんあります。ただ、ありがたいことに私には悩み別にそれぞれアドバイザイザーがいます。日ごろ診療をしていて診断や治療方針に悩んだ時、まず一番に相談するのは同業者である夫です。夫婦の会話は9割が診療に関することです。(まじめな夫婦です…)同じ建物内で診療をしていますが、1階と2階に分かれており、受付やスタッフも別々です。お昼休みもばらばらに往診に行くことも多いので、顔を合わせるのは帰宅後となります。生検、手術をした患者さんやこれは珍しいと思われる疾患についてはデジカメで臨床写真をとっているので夕食の支度をしながら、または食事をしながらの会話は“あの写真の患者さん結局何だった?”“今日こんな患者さんが来たんだけど…”“この間切除した患者さん病理組織の結果○○だったよ”などなど。こんな夫婦の会話を毎日聞いている小6の一人娘は一応医師志望です。 困った患者さんとの対応に悩んだ時、相談するのはスタッフ、同級生、そして行きつけの定食屋でお昼に顔を合わせる川反のママさん達です。 ある日、予約の時間に1時間半以上遅れていかにも怖そうなルックスの中年女性が初診でいらっしゃいました。すでに予約の時間を過ぎているので、お待たせすること、急ぎの症状でなければ(美容皮膚科の相談など)他の日に予約を取り直してきていただくよう伝えると怒り出しました… “せっかく来たのに診ないとは何事よ!私今日の今しか時間ないの!遅れたのはあんたの病院が分かりにくい場所にあるからでしょ!!” (当院は交差点の角で比較的分かりやすい場所にあると思うのですが…それに患者さんの住所から推察して1時間半も迷うとは思えない…もちろん口には出しません)細かいやりとりは忘れてしまいましたがヒステリーという言葉がぴったりです。 “もういい!このまま他の病院行くから。こんなとこ、2度と来ないわよ!”捨て台詞を残して出て行きました。(遅れてきた自分が悪いのに逆ぎれするなんて…やれやれ、何とか帰ってくれた…)一安心して胸をなでおろしていると “先生、さっきの患者さん結局予約取り直して帰りました。また来ますよ”と受付のスタッフ。 (あんな怖いひと、また来るの!!次はどのように応対したらよいのだろう…)暗い気持ちでお昼を食べに行くと顔なじみのママさん達がお食事中でした。 いつもお店にカサブランカを欠かさないというママさん、あのBzも飲みに来たというお店のママさんなど、いずれも接客のプロです。私はその日のいきさつを話しました。案の定話の途中から2人は怒り出しました。 ママさん1:“それはどこの女なの?!常識がないわねっ(怒)” ママさん2:“私の言うことをきけない人は帰って下さい!ぐらい言ってもいいわよ。うちも態度の悪い酔っ払いには他のお客様に迷惑になるから帰ってくださいって言うわよ!” (でもうちは飲み屋じゃないし…それは診療拒否にならないかなあ…) ママさん1:“そういう女はねえ、相手をみてふっかけてくるんだから。先生いかにも文句言いやすい顔してるものね~今度きたら戦わなきゃ!負けちゃだめよ!” ママさん2:“でも先生言えないでしょ~(はい、口げんか苦手です)あなた(ママさん1に)代わりに白衣着て先生になりすまして言ったらどう??” ママさん1&私:“それいい!!” この計略は流れましたが、味方になってもらったことは心強く、少し気も晴れました。最後は母に相談しました。 “人は鏡だよ。あなたも予約時間に遅れてきたその人にカチンときて表情に出したんじゃないの?それが相手に伝わったんだよ。”(そうかもしれません…) “その人、あなたに診てもらいたくてせっかく来てくれたんでしょ。ありがたい事じゃないの…きっと今頃大声だして悪かったな~と思ってるよ。今度会ったらにこっとして先日はすみませんでしたってあなたから言ってごらん、きっと大丈夫だから。”
次に会った時、ヒステリー女性は別人のように丁寧で、向こうから“先日は申し訳ありませんでした。”と謝ってきました。拍子抜けしましたが自然にこちらこそ…と言葉が出てきて和やかに診察は終わりました。母は占い師でも超能力者でもなく、普通のおばあさんですが、さすが私のことは何でもお見通し、最強のアドバイザーです。
余談ですが、川反のママさん達からはよく愚痴も聞かされます。“○○先生はいつもつけで飲んでいって全然お金を払ってくれないのよ…”“△△先生はお店の女の子へのセクハラがひどいのよ~普段はどんな人なの?” 返答に困ります。ということで“飲みに行ったらちゃんとお金を払うこと。お店の女性に嫌がられる振る舞いはしないように!!”それが私から夫への飲みに行くときのいつものアドバイスです。 次回はテニス部の先輩であり、最近海外の学会に行かれたそうで話題も豊富な、中通総合病院外科の進藤吉明先生にお願いしました。
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