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<ペンリレー>

発行日2010/06/10
お肌のクリニック  豊田 知子
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私の趣味(?)
 
 趣味は何ですか?と聞かれるといつも返答に困ってしまう。辞書で趣味とは何かと調べると、「専門としてではなく、楽しみにすること。余技。ホビー。」と書いてある。
 子供が生まれてからは、仕事と家事、育児で日々の生活を滞りなく過ごすことで精一杯で、「楽しみにすること」や「余技」などが殆どなくなってしまったような気がする。その時その時の流行っているものをとりあえずやってみるが、長続きしないものがほとんどである。
 そんな私が細く長く続いているものと言ったら、実益も兼ねて料理教室に通うことである。断続的ではあるが12年くらい通っている。(習ってきたことを家庭で発揮するかどうかは別であるが。)
 仙台にいたころに、たまたま近くにあった料理教室を訪れたことがきっかけである。自宅を開放したサロン的な教室であった。このA先生はアメリカ生活の経験をもとに、素敵なライフスタイルを提案し、商品開発なども行う事業家であった。料理も洗練されたアーティスティックなもので、器やテーブルコーディネートなども真似のできないセンスの良さであった。味の方はもちろん言うまでもない。通常6,7人のグループで作業するのだが、切る係、調理する係、皿洗い係など自然に分かれる。新入りの私はまずは洗いものから入った。次々に出てくる洗いものに殆どシンクと壁を見つめ、時々振り返りながら料理の工程を確認した。次第に切ったり、調味料を測ったり調理に加われるようなった。元来食いしん坊で、小学生のころから「きょうの料理」が愛読書だったにもかかわらず、実家にいたころは家事は何もせず、一人暮らし時代も全くと言っていいほど料理をしていなかった。殆ど医局で出前か病院売店の弁当、当直の検食で暮らしていた。そんな花嫁修業も全くしていない出来の悪い新米主婦であった私は野菜の切り方、魚のさばき方、生ゴミの上手な処理の仕方、五徳のうまい掃除の仕方、ふきんの消毒の仕方など、料理のいろはから教えていただいた。A先生からだけではなく、教室にきていたベテラン主婦のお姉さま達に手とり足とり教えていただいた。こうなると趣味ではなく修行に近いが、その甲斐あり調理の下準備は粗方できるようにはなった。お陰でなんとか主婦の最低限レベルに到達した(と思う)。夫の留学でサンディエゴに住んでいた時、同じアパートメントの白人女性から、「あなたのお宅からいつもいい香りがする。あなたはシェフか?」と言われるくらい成長した。(匂いだけであるが)
 その後秋田に転居になり、A先生とは一旦お別れになってしまったが、秋田でまた素敵な料理研究家に出会うことができた。このB先生は秋田の旬の食材やこれから注目されるであろう食材を使って、和洋中エスニックと様々な料理に変身させて地域おこしもしようという先生。意外な組み合わせもあり、びっくりすることもあるが、伝統的な秋田の料理の基本や旬の味わいを大切にしている。初めての教室の時、私は新人なのでまず皿洗いからと思い、皿洗いに没頭していたら、B先生が「毎日家でやってるでしょうからここに来た時くらいは洗いものしないでいいのよ。」と優しく言ってくださった。家事や仕事の日常から少し離れて、ゆっくりとしてほしいというのが、B先生のコンセプトであるそうだ。感激である。そうなると、作ることと盛り付け、試食に熱中できる。食べ終わった後の皿洗いもない。それだけでも嬉しい。ゆったりと味わい満腹になると、その日の晩御飯はどうでもよくなり必ず粗食になる。習ってきたことを家庭で発揮するかどうかは、私の時間と心のゆとりにかかっている。滅多なことでは発揮されないが、気まぐれに凝った料理をたまに作る。男鹿の鯛でアクアパッツァ。桃豚のヒレソテーふきのとうソース添えなど。しかし家族は「塩焼きがいい。」とか「とんかつとふきのとうの天ぷらがいい。」とか、なかなか理解が得られないのがちょっと悲しい。少々自己満足の部分があるが、たまにレシピを見ながら作るというのも脳が活性化していいはずだし、こんな食べ方があるんだと家族の味覚を鍛えて(?)いくのもいいと思って作り続けている。家族には私のこの気まぐれに今後も付き合ってもらう予定である。
 最近は電子レンジを使って作るカレーが私のお気に入りである。電子レンジに入れるだけなので、子供用と大人用の2種類を短時間で作ることができる。朝から材料を切ってスパイスなども電子レンジ用容器に入れ、冷蔵庫で保管。帰宅後ただレンジに入れるだけである。早めに帰宅した子供がレンジでチンして食べることもできる。なんとも簡単で、体にもいいし、結構おいしい。ワーキングマザーには助かるレシピである。しばらくこのブームは続きそうだ。
 つい最近、久しぶりにA先生の料理教室にお邪魔する機会があった。A先生から、「玉ねぎのみじん切り、上手になったわね。」というお言葉をいただいた。12年たって初めて褒められ、やっとスタート地点に立ったような気がした。私の趣味兼主婦修業はまだまだ続きそうである。
 
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