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<ペンリレー>

発行日2010/06/10
村山クリニック  村山 仁
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ダルマさんがころんだ
 
 5月になってようやく長い冬を抜け出した感じがしますが、かと思えば連休中には各地で猛暑になったりと、予想のつかない天候がこれからも続くのでしょうか。
 さて久々のペンリレーの依頼ですが、身の回りには変わったこともなく題材にするものもありません。困ったものです。そういえば最近不眠が良くなったような気がします。数年前から続いていた不眠が確かに改善してきました。春眠暁を覚えずの季節の変化によるものかも知れませんが、どうもそれだけでもなさそうです。2か月ほど前から始めた朝夕の座禅が少しずつ効いてきたような気がします。まあ座禅といっても寺院や道場で本格的に修業したわけでもなく、小学生のときに教わった作法を思い出したり、本で調べてやる自己流のものです。少し前に見た映画の中で、「座禅は修禅に非ず、安楽の法門なり」という道元禅師の言葉が耳に残り、どうも「安楽」という言葉に弱い自分としては自然に座ってみようかという気持ちになったようです。
 そもそも座禅というのは禅定に入ったお釈迦様の姿を模倣したもので、座り方はインドのヨーガ行者達も用いたもので、道元禅師のテキストによれば右足を左の腿の上に、左足を右の腿の上に安んずる(結跏跣坐)となっていますが、運動不足と関節の固さに自信のある自分にとっては至難の技です。無理やり組んで後ろに転がったときには、まさに起き上がれないダルマの姿そのもので、天井を見ながら一人で笑ってしまいました。
 座禅は静かな場所で、風や煙の入らない所、雨露が漏ることのない所(「正法眼蔵」座禅儀)を選ぶこと。座る所は尻が冷たくならないような、暖かい敷物を敷く。昼夜とも暗くない所でなければならない。そして冬は暖かく、夏は冷たい所が良いと説明されています。これによると暑さや寒さに耐えながら行われる我慢大会のような参禅会は道元禅師のいう作法ではないことが判ります。
 ところで、結跏跣坐のできない自分は初心者のための「安楽」な坐形である片足だけをもう一方の腿に載せる半跏跣坐で坐ります。
 腰の裏側あたりにだけ力を残して背筋を伸ばし、両手を重ねて栂指同士を合わせて、目は半眼にして視線を前方の床に落とします。呼吸は呼気を長めにしてゆっくり行います。この呼吸が結構難しい。芥川賞作家で禅僧の玄侑宗久さんによれば、自分が宇宙の中心にいて、呼吸のたびに宇宙そのものと交流するイメージで、呼気とともに毒を吐きだし、吸気とともに宇宙のエネルギーをいただく感じと説明されていますが、とてもそんなイメージにはなれません。途中で苦しくなってリズムを乱してしまいます。
 「安楽の法門」に近づくためには、やはりちゃんとした指導者について修業しないといけないのでしょうが、こんな自己流の座禅でさえも不眠症を改善させてくれたという実感があります。座禅はある種のリズムをもった意識的な呼吸をするから、セロトニンの分泌を促すといわれているのも何となく納得できるような気がします。不眠からうつ病になる人も多い世の中、もっと「座禅」が注目されてもいいと思うのですが。

 
 ペンリレー <ダルマさんがころんだ> から