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<ペンリレー>

発行日2009/12/10
御野場たなかレディースクリニック  田中 秀則
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犬と私
 
 私のマイブームは、早朝ウォーキングです。開業してから、日頃の運動不足の解消にとはじめたのですが、気分転換にもなるし、 新たな街の発見の楽しみもあって、続いております。だいたい40分ほどかけて、自宅から、さまざまな地区へお邪魔しております。
 そんな私の秘やかな楽しみを、あっさりと壊してしまうのは、早朝の犬との遭遇です。犬の散歩の方は、結構多いのです。ひどいと、数分に一回、犬と対面することになります。なぜ、そんなに犬に会うのが困るのかといいますと、私が、犬と対面すると、ほぼ100%吠えられるからです。小さい犬から、大きな犬まで、また、種類に関わらず吠えられます。ひたすらウォーキングに集中する私に向かって、スピッツは、吠えるし、大型犬も吠えます。最近、怖かったのは、ある中年女性が大きな秋田犬を連れていたのですが、突然、私に向かって、吠えて、にじり寄ってきて、飼い主の制止も聞かず、こちらに向かってきた時は、この世の終わりと思いました。
 さらに、最近は飼い主のマナーが悪いせいか、綱を付けず、放し飼いで犬の散歩する方がいるのには、閉口しております。当然、必然的に、私に向かってきますので、こちらも命がけです。以前、小泉潟公園で、家族四人でバトミントンをやっていたときは、やはり、猟犬のような放し飼いの犬がやってきたときは、ラケットで防戦しました。
 
 「やれやれ」と、私は犬に吠えられるたびに、思います。

 犬好きの方が多いこの世の中で、「犬が苦手」な人の人権も守ってもらいたいと、常日頃思っております。「犬が苦手」というと、「変な人」のレッテルが貼られるのがいやなので、「犬が苦手」な人は、ひっそりと、生きているのです。
 そんな中、私は、「私が絶対成れない職業」の「犬の訓練士」の方とお話ができる機会がありました。私は、その方に相談しました。
私:「あのー、私は、犬が苦手で、日本中で、犬が苦手ベスト10に入るくらいなんですけど・・・」
訓練士:「あはは、そうですか。」
私:「朝のウォーキングの時に、かならず吠えらるので、何とかしたいのですが・・・」
訓練士:「うーん、それならですね、犬と出会った時は、下を向いて、犬の顔を見ないで下さいね。私は、関係ない、関係ない、って感じで、脇をするりと通り抜けてください。」
私:「そんなんで、大丈夫ですか?」
訓練士:「たぶん・・・」
 早速、次の日から、試してみました。犬と遭遇しても、「私は、関係ない、関係ない」と、念仏のように心の中で唱えると、あら不思議、吠えられる回数が減りました。

 しかし・・・・・
 物事は、そう簡単に運びません。
 私のウォーキングコースにある一軒家があります。板塀で、家の周りを囲っているのですが、庭に放し飼いにした犬がいます。当然、吠えてくるのですが、ある日は、その板塀の隙間から、こちらに向けて、猛烈に吠えました。私もとても腹が立ったので、犬に向かって、『ワン、ワン、ワン!』と、吠え返しました。すると、「キャイーン」と、すごすごと立ち去って行きました。これは、上手くいったか?思いました。
 その日、先ほどの犬の訓練士さんに会う機会がありました。
私:「吠え返したら、キャイーンと、逃げて行ったのですが・・・」
訓練士:「あはは、もう、明日から吠えませんよ。」
私:「ほんとうですか?」
訓練士:「たぶん・・・」
 半信半疑でしたが、次の日にその家に行ってみると、吠えられませんでした。その次の日も、そのまた次の日もです。改めて、訓練士さんて、すごいなあ、犬のことしっているなあ、と感心しました。それから、快適な、早朝ウォーキングが、はじまりました・・・

 そんなある日、いつものように、ウォーキングを楽しんでおりました。すると、遠くから、犬の遠吠えが聞こえました。かまわず、私は歩いていましたが、その犬の吠え方は、激しくなります。そして、その板塀に囲まれた家に行くと、狂ったように犬が吠え続けていました。ものすごい剣幕で吠えていました。私が、立ち去っても、ずーーーーーーーと、吠えていました。おそらく、その犬は、私が行くと吠えつづけるので、ただ単に、家の中に、入れられただけだったようです。はあー。

 その後も、早朝ウォーキングは続けていますが、いつも、犬に吠えられています。

「やれやれ、君は吠えたいのかい?」
 私は、犬に、話しかけています。


 
 ペンリレー <犬と私> から