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<ペンリレー>

発行日2009/04/10
さとう脳神経・メンタルクリニック  佐藤 直紀
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出前ミニ講演のご紹介
 
 秋田県の自殺率は残念ながら全国でワーストワンです。以前から秋田県医師会で自殺予防の取り組みはされていましたが、秋田市医師会での取り組みはあまり有りませんでした。そこで秋田市医師会では去年から自殺予防対策委員会を立ち上げました。実は、僕もその委員の1人です。その委員会で話し合いをした結果、医師会員向けの活動と一般市民向けの活動をしようということになりました。その中の一般市民向けの活動として、地域のクリニックの待合をお借りして、心の健康に役立つ講演を行うことになり、その第一回目が去年の11月に土崎の整形外科医院で行われました。タイトルは「心の風邪の対処法」です。 
 講演の約1ヶ月前から、講演を行うクリニックにお知らせのポスターを掲示させていただきました。また、持ち帰り用の小さなパンフレットもクリニック内に用意して自由に持ち帰っていただくようにしました。
 さて、講演会当日ですが、参加人数は35人ほどでした。会場となったクリニックの院長の挨拶に引き続いて、講演を開始しました。心の健康に関連した30分から40分程度のミニ講演です。今回は、不安障害、うつ病についての話を中心にして、後半は、ストレス対処法、認知療法の日常生活への応用などを話しました。そして、その後は質疑応答の時間です。当初から質疑応答の時間を充分に取ってやっていこうと決めてはいたのですが、これがなかなか刺激的な時間でした。「うつ病で治療を受けている人と接する時に『頑張らないで』と言いますがどうしたらよいでしょう?」、「相手の人が悲観的になって泣かれたらどう対応したら良いでしょう?」とか、「自分は不眠で薬をもらっている。本当は薬を止めたいが止めれずにいる。長く飲んでいても大丈夫でしょうか」などなど、ご自身の事での相談だったり、家族や身近な人の相談だったりという具合ですが、非常に実際的な内容でした。演者と聞き手が非常に近いので聞きやすいと言う気安さもあったのでしょう。質疑応答は30分近く続きました。
 後で思い返してみても、整形外科医院の待合室で精神科医が話をして、質疑応答をするという状況は、とても興味深いものだったとへ思います。一般に、うつ病などの心の病気になった場合でも、精神科医を受診しないで、一般の身体科を受診するケースが多いとされています。その場合、内科や整形外科から精神科へ紹介されて受診になれば良いのですが、精神疾患への偏見もあり、受診を勧められても受診しないケースが多く見られます。精神科を受診すること自体が、恥ずかしいこと、あるいは怖いことと思っている人もいるようです。その意味でも、精神科医が一般医院に出前して活動するということは有用だなと感じました。
 また、待合室と言う空間、場の持っている独特の力もあるようでした。診察室や講堂とは違う雰囲気です。診察室における医師-患者関係とは違い、より気軽に質問ができるのでしょう。とても新鮮な体験で勉強にもなりました。待合室を会場として提供してくださった医院の方々には深く感謝しております。秋田市医師会では、2009年度も、精神科医が出かけて行って、医院の待合室をお借りしてミニ講演を行う活動を続けたいと考えています。皆様、どうぞよろしく御協力をお願いいたします。
 ペンリレーの次回は工藤胃腸内科クリニック工藤由比先生にお願いしました。
 
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