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<ペンリレー>

発行日2009/03/10
パート医(秋田赤十字病院)  橋本 啓子
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ジョエルコンサートと清太郎さんのクリスマスツリー
 
 ひらの眼科、平野洋子先生からペンリレーのバトンを受け取りました。私は中通リハビリテーション病院で訪問診療を行っていますが、往診の依頼をいつも快く引き受けてくださる先生に感謝しております。
 さてもう一つの勤め先、秋田赤十字病院での心温まるお話です。

 昨年12月5日、病院のロビーで秋田市出身のプロ歌手、ジョエルさんによるクリスマスコンサートが開かれました。伯父さんが通院中というご縁から、ご本人の希望で実現したそうです。
 1曲目はアカペラで“Holy Night”。限りない優しさを感じさせる澄んだ歌声に私は一気に引き込まれました。2曲目はピアニストの伴奏で、「サンタが街にやってきた」。3曲目は「虹のかなたに」。
 このころになると、ロビーの椅子席は満杯になり、その周囲をコの字型に囲む人垣ができ、階段や2階の廊下を人が埋め尽くしました。患者や通りかかる訪問者、職員が足を止めてじっと聴き入りました。
 通りかかる者を惹きつけるのはジョエルさんの魅力に違いないのですが、私はこの2-3ヶ月間の病院の出来事を思い起こしていました。
 9月下旬、研修医の急死という衝撃的な出来事が起きました。彼に関わった人、直接関わりのない人も含めて、多くの職員が動揺し、それは縁のない部署にいる私にも伝わってきました。
 11月6日、総合保健センターにおいて病院主催の緩和ケア講演会が開かれ、職員も多数参加しました。講師は埼玉医大精神腫瘍科、大西秀樹教授。がん患者とその遺族のこころのケアの専門家ですが、講演の内容は研修医の死に心を痛めている職員にとっても、心を癒すに余りあるものでした。
 12月3日、山形で産業保健を専門にしておられる精神科医、東谷慶昭先生の講演会が院内で開かれました。テーマは「職場におけるメンタルヘルス」。医療を取り巻く状況が厳しい中、経営を黒字にすることは無理であること、そして職場のメンタルヘルスを保つには、お互いにいいところを褒めあうことが大切であるという内容でした。
 そんなことを思い起こしながら、ジョエルさんの歌が患者はもちろん、職員の心も癒してくれている、それを感じた職員たちが忙しい中、数分でも足を止めて聴き入っている、そんな風に感じられました。いつもはあまり見かけない、男の医師の姿が多かったのも心に残りました。
 歌の合間のジョエルさんのお話も素晴らしかった。歌の解説がそのまま彼女から観客へのメッセージでした。特にオリジナル曲“My Wild Irish Rose”は、作者が公園で女の子にもらった野バラが萎れてしまっても「僕にとって君は世界一美しい花なんだよ」と花に語りかけるという内容でした。
 「聖しこの夜」を彼女と観客とで合唱したあと、アカペラの“Amazing Grace”で30分余りのコンサートは終わりました。
 終了後のNHKのインタビューで、男性患者が「生命が躍動するような歌声は素晴らしかったです。幸せをいただきました」と応え、またジョエルさんも「私が歌をプレゼントしたことで皆さんの心が少しでもあったかくなってくれればいいなと思ってます」と話していました。

 この日は、下浜の佐藤清太郎さん、シンコさんご夫妻もジョエルさんのコンサートを聴かれました。前院長竹本吉夫先生とのご縁で、佐藤さんは病院が上北手に移転してから毎年、クリスマスツリー用に杉の木をプレゼントして下さっていますが、飾られた姿を見たことがないというので、お誘いしたところ、お二人で来て下さいました。

 というわけで、この日は清太郎さんの森のツリーを背景に、ジョエルさんの歌を聴くという二つのプレゼントをいただいた嬉しい日でした。
 次回は秋田赤十字病院附属あきた健康管理センター伊多波未来先生にお願いしました。
 
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