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<ペンリレー>

発行日2008/09/10
すずきクリニック  鈴木 雪子
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フジ子のピアノ、聴いてきました
 
 最近、クラシック音楽をよく聴く。去年あたりから年に数回コンサートにも足を運ぶようになった。すると生の演奏はCDで聴くのとは迫力が違うのでだんだんエスカレートして、先日東京まで出かけてフジ子ヘミングのリサイタルに行ってきた。
 彼女はスウェーデン人の父と日本人ピアニストの母の間に生まれ、若い頃からピアノの才能を見出されてきた。芸大卒業後ドイツに留学し、有名な演奏家たちに認められてリサイタルを開くまでこぎつけるがその直前に高熱を出し、聴力を失ってしまう。薬の副作用らしい。リサイタルは失敗し、聴力は片方のみ40%ほどまで回復するも以後ヨーロッパでのチャンスは訪れなかった。それでもピアノ教師や小さなコンサートを続けながら30年以上ヨーロッパで活動してきたという。10年ほど前、母の死をきっかけに日本に帰国。下北沢でピアノを教えながら独特の服装で居酒屋や小劇場に出没する変なおばさんとして一部で有名だったらしい。NHKのドキュメンタリーで紹介されるや、大きな反響を呼び60歳を過ぎて人気ピアニストになった。
 私が彼女の半生を詳しく知ったのはブームが始まって5年くらいたってからだろうか。NHKではなかったが、似たようなドキュメンタリー番組を偶然見た。その時はすごい人だな、と思っただけだが後日CDで演奏を聴いてちょっとびっくりした。私はクラシックの通ではないので、それまで曲の好き嫌いはあってもピアニストによる演奏の違いをあまり意識した事がなかった。が、彼女のピアノは何か違った。躍動感があって耳に心地よい。すっかりファンになってしまった。
 さて、満員の観客は中年以上の女性が多かったように思う。私の近くに座った女性は20回以上聴きに来ていると言っていた。演奏はスカルラッティから始まってリストやショパンの名曲など十数曲、最後は有名なラカンパネラで締められた。生のフジ子はやはり存在感があって、聴き慣れた旋律の中にも彼女の人間性を思い起こさせるような、個性的な演奏だった。ただ、彼女の弾き方には賛否両論あるようで一緒に行った夫は“そんなにすごい演奏か?チケット代(12000円)高すぎないか?”と否定的な感想を述べていた。
 演奏の評価は人それぞれだろうが私を含めた多くのファンはたぶん、彼女の生き方によって大いに励まされるのだ。彼女は単なる演奏者だけでなく、感動的な物語の実在ヒロインでもあるわけなのだ。
 そんなわけで、このコンサートのためだけに東京へ行ったわけではないもののけっこうな出費だったが、私はとても満足して帰ってきた。チャンスがあれば是非また聴きに行きたいと思っている。
 次回は最近開業されたばかりの同期生、ものお耳鼻科クリニックの桃生先生にお願いし
ます。
 
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