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<ペンリレー>

発行日2007/08/10
秋田赤十字病院  中畑潤一
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祈交通安全
 
 救急外来では交通事故をはじめとした外傷に遭遇する機会が多く、この機会に交通安全について日ごろ感じていることを書かせていただきます。

子供の事故
 昨年、秋田県内をはじめ全国各地で子供が犠牲となる不幸な事件が相次ぎ、各校区でパトロール隊を作って巡回するなど不審者対策の必要性がさかんに報道されました。そうした対策はもちろん必要でしょうが、現実には、子供にとっての最大の脅威は不審者ではなく、ごく普通の生活のなかで起きる交通事故ではないかと感じています。
 登下校中に車と接触したり、帰宅後に自転車に乗っていて車と衝突したり、毎日のように患者さんが搬送されてきています。しかも事故は一部の悪質ドライバーの運転する車だけではなく、われわれも含めたごく普通のドライバーの運転であることも多いようです。
 ですから、出勤途中など自宅近くでもより慎重にスピードを抑えた運転を心がけるように、また、車庫入れや発進の際など周囲の子供に十分に注意する必要があります。自宅の車庫に入れようとして自分の子供をひいてしまった等の事故は遠いどこかのできごとではなく、実際に秋田でも起きていることです。

チャイルドシート
 子供を車にのせる際には、必ずチャイルドシートに座らせましょう。それさえ装着していれば、もっと軽いけがで済んだのにという思いを何度も経験しています。逆にチャイルドシートにきちんと座っていたお子さんは、よくこんな事故でかすり傷ひとつ負わなかったものだと、その効果を実感することも数多くあります。
 チャイルドシートの効果については、何度もいわれていることで、法的にも義務化されており、すでに常識といってよいことですが、子供をきちんとチャイルドシートに座らせていないようすもたびたび見かけます。チャイルドシートは取り締まりがあるから取り付け、座らせるのではなく、子供を守るためであることをさらに啓蒙するべきでしょう。
 私自身も普段はチャイルドシートに必ず座らせていますが、子供が泣き出したりすると、祖父母など同乗者から、かわいそうだから抱っこしてあげればと言われ、やむなく、チャイルドシートから降ろして、抱いてもらってしまうこともあります。しかし、心を鬼にして(祖父母とけんかしてでも)チャイルドシートに座らせるべきでした。

後部座席もシートベルトを。
 後部座席でもシートベルトの着用は大切なことです。シートベルトを装着していなかったがゆえに車外に投げ出されたり、さらには、後席の乗員が前席に飛び込んでしまったりして、前席の乗員の損傷も増加させてしまうこともわかってきました。後席の同乗者にシートベルトを着用するように勧めることは窮屈な思いをさせるのではなどと気がひけますし、自分が乗せてもらっている場合も運転手を信用していないと思われないかなどと気を使いシートベルトを着けないことも多いかと思います。しかし、今後は、座る席にかかわらず、シートベルトを着けることを常識にしていきたいものです。
 また、デイサービスなどでのお年寄りの送迎中の事故にも遭遇する機会もありました。ワゴンやマイクロバス等の多人数乗車の車でもシートベルトを着用するようにもっとPRするべきでしょう。
 以上のことは、この文章を読まれている先生がた御自身は日ごろ気をつけていらっしゃるでしょう。ですから患者さん、お知り合いなどに対して機会あるごとに強調していただき、指導、啓蒙をお願いできれば幸いです。私たち医療関係者は、医療現場では、きわめて小さい確率で起こる重大な事故を少しでも減らすために、小さなミス、小さな不注意にも細心の注意を払い、医療安全の向上を目指しています。しかし、私自身、いざ自分がハンドルを握ると、黄色信号に変ってから速度を上げて交差点を通過したり、直進車の少しの合間を右折をしたりしてしまうことがままあります。先日は、あまりの交通外傷患者の多さに、当直医の先生から「車を運転することは、銃を持っているのと同じことと思わないといけないですね」と声をかけられましたが、まったく同感であり、自戒も込めて書かせていただきました。
 次は秋田赤十字病院消化器外科大内慎一郎先生にお願いしました。
 
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