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<ペンリレー>

発行日2006/07/10
清和病院  藤枝信夫
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『食中酒のすすめ』
 
 「ただいま一。」「お帰り一。」
「今日のご飯なに一?」「焼き魚と冷や奴一。」
「じゃあ、日本酒か一。」・・・。私の帰宅時の一コマ。
 その日の夕飯のメニューに合わせて、日本酒だったり、ワインだったり。時にはビールも。我が家では私がお酒を用意します。(ちなみに、購入も自分のこづかいから。)妻と私は、あまりお酒が強くないので、基本的には夕食の間しか飲みません。いわゆる『食中酒』です。ふたりで、日本酒なら2-3合、ワインならボトル半分程度。
 『食中酒』などと書くと、私のおやじの世代の方々から、「本当の酒飲みは、飲む前や飲みながら、めしを食ったりしね一んだよ。」(星一徹調)と、お叱りを受けそうですが、それは、日本酒が一級酒、二級酒と呼ばれていた昔の話。最近の日本酒は、良く出来ていて、料理との相性が抜群で、お酒が料理の味を、さらに料理がお酒の味わいを引き立てる事がしばしばあります。こ戯れた言い方をすると、お酒と料理の『マリアージュ』を楽しむ事が出来るのです。
 ここで薀蓄をひとつ。日本酒は、吟醸酒系と純米酒系に大別されます。純米酒は読んで字の如く、お米だけから造られます。裏ラベルを見ると原材料名のところに「米・米こうじ」と表記されています。これに対し吟醸酒では「米・米こうじ・醸造アルコール」とあり、ごく少量の醸造アルコールが添加されています。この醸造アルコールは無味無臭なのですが、醸造過程で生じる様々な香り(メロンやバナナ等)を吸収して、華やかな香り(吟醸香)を演出するもとになります。大吟醸を冷やして飲むと、たいていの女性は「白ワインみたい。」とおっしゃいます。一方、純米酒は華やかさでは吟醸酒に一歩譲りますが、落ち着いた、あるいは、どっしりした味わいで、また別の良さを持ち合わせています。
 このように同じ日本酒でも、かなり味わいが異なるのです。そこで我が家では、夕飯の際には純米酒と吟醸酒の四合瓶を1本ずつ食卓に並べ、妻とふたりで、「今日の焼き魚には、こっちの方が合う。」とか、「冷や奴には、こっちだな。」とか、好きな事を言い合いながら、楽しく夕食時をすごしています。   
 これが、本日のお題の『食中酒のすすめ』です。
「効能・効果」としては、
(1) 2種類を比べる事によって、違いがよりはっきりします。さらに、自分の好みが分かるようになります。応用編としては、県内酒と県外酒を飲み比べる。秋田のひとは、秋田のお酒しか飲まない傾向にありますが、県外酒と比較すると、色々なことが分かってきます。ぜひお試しを。
(2) 自宅での夕食が楽しくなる。(夫婦円満のヒケツ?)
(3) 同じお酒でも、料理によってかなり味わいが変わるので、ベストマッチや、ワーストマッチを体験できる。
 自宅での『食中酒』としては、日本酒をおすすめします。日本酒の良いところは、
(1) ワインほど気難しくなく、普通の冷蔵庫で保存が出来、開封してからも1~2週間はおいしく飲める事。ワインは抜栓すると、当日あるいは翌日には飲んでしまわないとだめですが、日本酒は3~7日目が一番味が乗っていたりします。
(2) 自宅での料理の80%をカバーできる事。我が家では、昨日の赤ワインが半分残っているのに、焼き魚や刺身が出てくることがしばしばあります。
 とは言っても、クリーム系の料理やオリーブオイル、チーズを使った料理には白ワインが合うし、トマト系の料理やステーキは、やはり赤ワインでしょう。また、カレーや餃子、焼肉、ピリ辛系の料理には、キリリと冷やしたビールが一番ですよね。
 「注意」日本酒はどこでも入手可能です。しかし、おいしい日本酒の入手はそう容易ではありません。お酒は保存が悪いとヒネてしまいます。(日本酒なのに紹興酒のような味わいがします。)造り手、流通、小売店のいずれか一か所でも保存が悪いと、本来の味が発揮されません。おいしいお酒を入手するコツは、信頼のおける酒屋さんをみつける事です。安くてもおいしいお酒、けっこうありますよ。
 最後に、最近の我が家のマイブームをひとつ。風呂に入る前にシャンパングラスを冷凍庫に忍ばせておき、風呂上がりに、これにビールを注いで飲むと、泡が細かくなり缶ビールが3倍おいしくいただけます。お試しあれ。

「補足」厳密には、精米歩合(精米して残る白米の割合)が60%以下の場合が吟醸酒と呼ばれます。
 
 ペンリレー <『食中酒のすすめ』> から