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<ペンリレー>

発行日2006/04/10
中村医院  中村淑子
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比叡山薪歌舞伎を観て
 
 ペンリレーが廻って参りまして、閉口している次第です。私は若い頃から芝居が好きで、よく歌舞伎座などに行っておりました。今も時々出掛けております。特にどの役者が好きとかではなく、同じ演目でも、それを演じる役者によって、舞台がかもし出す雰囲気と云いますか面白さがだいぶ違って見えたりする所に興味があります。
 以前と比べますと、時代の流れと共に役者も変りましたし、出される演目もだいぶ変って来ている様に思われます。
 そんな中、昨年夏(平成17年8月)に比叡山で薪歌舞伎が上演されました。近頃は劇場外において、例えば宮島とか姫路城などに舞台を設置して芝居が上演されておりますが、遠方の事でもあり、上演日数も少なく、また切符が入手出来ない事もあり、行った事がありませんでしたが、昨年の夏は、たまたま切符が入手出来ましたので、出掛けて来ましたので、その様子を少々書いてみたいと思います。
 前夜、特急寝台「日本海」で京都に行き、娘達と合流し、午後から比叡山に向かいました。夏の京都は暑くて、うだりそうでしたが、比叡山に着くと涼しく別世界でした。延暦寺に参拝し寺院を少し拝見してから、会場へ行きました。
 舞台は、延暦寺の裏側に当る朱塗りの阿弥陀堂の建物とその渡り廊下を利用して作られており、両側は引込みとなっており、後方から舞台正面に向かって客席の真中を花道が作られ、舞台の両側には薪が用意されており、渡り廊下には、長唄、鳴物の人達がずらりと並んでおりました。その手前には、パイプ椅子が階段状に置かれ、番号が貼ってあり、そこが座席でした。
 演目は片岡仁左衛門による’連獅子’と、今は坂田藤十郎と改名した中村鳩治郎による’永久の燈火’でした。午後六時、夕暮れが迫る頃’連獅子’が始まり、終了の頃は暗闇で、頭上には星が瞬き、木々がそよぎ何とも云えない風情でした。
 暗闇の中に舞台がぼんやりと浮かび上がる様に見えておりました時に、僧侶によって延暦寺から運んで来たと云う法灯が薪に灯され、薪火が燃え上がり、舞台を照らし幻想的な情景の下で、中村鳩治郎による仏教大師・.最澄を題材とした創作歌舞伎’永久の燈火’が演じられました。場所柄的にも選ばれた演目と思います。暗い中に、薪火が燃え舞台を照らしている一方で、目もくらむ様な現代的照明が交錯し、それに長唄や鳴物(笛・太鼓)が不思議と共鳴し素晴らしい舞台でした。
 役者の演技もありますが、山の涼風と空に瞬く沢山の星と、木々のざわめきの中で、本当に思いがけず至福のひとときを過ごしてきた次第です。
 次は橋本禎嗣先生にお願い致しました。
 
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