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<ペンリレー>

発行日2005/09/10
白根病院  白根研二
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温度差
 
 7月はじめに研修や病院学会などで旭川、東京、名古屋と連続で出かけてきた。夏とはいえ、朝晩の冷え込みに上着が必要な旭川から、気温が36℃以上で人の波であふれている名古屋まで、その温度差は大変なものがあった。
 旭川では入場者数が上野動物園を追い越して日本一の旭山動物園を見学してきた。動物をできるだけ自然な状態で見せるという工夫がなされている。ヒグマやライオンなどは、その姿を360度どこからでもみることが出来る。待望久しかったシロクマもここには三頭飼われていて、見学者の目の前をのっしのっしと闊歩している。厳冬のこの地にあって365日間開場されていて毎日イベントがある。
 動物への愛情と高齢者や障害者に対する配慮が強く感じられた。どこをとっても秋田の動物園は一歩譲ってしまう感じがした。
 名古屋はその温度もさることながら町中が熱気でむせかえっている。駅前には250mを超える高層ホテルができ、それに負けまいとトヨタ自動車の本社ビルが完成間近である。 中部国際空港(セントレア)の完成、愛地球博の開催も日本一の経済発展率をつくりだしている。町中を行き交う人の表情もそれとなくいきいきしている。閑散とする我が町秋田にもお裾分けして欲しい気がした。
 日本病院学会のシンポジウムの会場は名古屋国際会議場でシンポジウムは秋田県民会館の倍以上はあると思われるメインホールで行われた。テーマは「中小病院の歩むべき道」である。私は地方都市の小病院が時代の変革に遅れない病院づくりについて講演した。経済的基盤も人的基盤も脆弱な中小病院は、地域に密着、他の医療機関との連携、患者さんに安心安全を約束するものでなければならない。厳しい経営状況は今後も続くであろうが、職員のモチベーションを低下させることのないように全員参加型医療を提供したいとの内容である。名古屋の川原先生は156床(中小病院とは200床以下の病院を指す)ながら、PETを7台導入するなど検診や透析に注力し、地方の大学病院を軽くオーバーする170億円くらいの収入がある病院である。大阪の牧先生は昨年療養中心の病院から都市型の急性期病院として新築移転してからの経過を話された。医療不景気の時代にあっても守りの姿勢はとらず、関連施設や関連病院も建設して攻撃的かつ緻密な病院経営をされている。 シンポジウムを終えて、中小病院委員会の諸先生との雑談をした。中小病院と一口に言っても全く条件が違うのがほとんどで医療改革、医療費の改定についてもその考え方にかなりの温度差がある。病院会の中でも大病院と中小病院、公的病院と私的病院、都会の病院といわゆる過疎地の病院どれも大きな温度差があり、必ずしも一枚岩にはなれていないようだ。医師会の中でも開業医、勤務医、様々な病院では考え方に違いがありそうだ。医師会はじめ各種団体から政治連盟の振り込み用紙が届くが、その無力感から振り込みをためらってしまうのは私だけであろうか?医療を施す側が、その温度差のために一枚岩になれず、財務省や厚生労働省のいいなりになっているように思えてならない。医療をする側の利益ではなく、また官主導でもなく、医療を受ける国民に社会保障全般を考えていただくのはどうだろうか?意外に誰でも受け入れられるものが出来るかもしれない。私個人の考え方で生意気のようだが、医療人が安心して冷静に仕事に専念出来る環境さえあれば十分と考えている。国民の医療を守るには基本的にこの考えに立つべきだと思う。
 シンポジウムが終わり飛行機の時間まで三時間あったが暑さと疲労もあり、飛行場でゆっくりビールを飲みながら夕食をとろうと、タクシーで小牧空港に向かった。空港に入ってびっくり、これまでの小牧空港の面影が全くない。レストランはなく食券を買ってビール、カレー、きしめんなどをカウンターからもらってパイプいすに座って食べるだけである。おみやげ屋さんもなく、ワゴンセールで愛地球博関連のおみやげなどわずか並べてあるだけでした。国際空港も小型機7路線13便(秋田はそのうち3便)の県営空港になればかなりの質の低下がみられるのは必然なのか?ここにも大きな温度差を感じた。
 長旅を終え、ふるさと我が秋田に戻ってきた。暑いだの寒いだのといわずに朝から晩まで仕事で走り回る日々の繰り返しが再開である。

 
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