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<ペンリレー>

発行日2005/03/10
塩川整形外科医院  塩川英二
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韓流
 
 去年から日本人の男性なら「冬のソナタ」(いわゆる冬ソナ)を中心とした韓流のブームに驚いた人も多かったのではないかと思う。韓国のKBSが作製したTVドラマの「冬の恋歌」(キヨウルヨガ)を日本のNHKが放映して、おもに20才代以上熟年の女性の心を熱くしてしっかり捕らえた感がある。放映は当初衛星TVだったようであるが、最近まで、又深夜に総合TVで放映しても最終のころは関東でも関西でも20%以上の視聴率をあげたようで、この熱のさめる気配が感じられない。どう云う経緯からかはよくわからないが、日本人向けに「冬のソナタ」とはまたうまい標題にしたものである。このドラマの監督のユン・ソクホさんは脚本の段階からこの恋歌(ヨンガ)の原題にこだわりを持っていたようである。冬(キヨウル)は固有語としても、恋歌は漢字の由来のように思うのだが、まだ日本より恋の字の持つ重さが道徳的に韓国では(或は監督にとって)はるかに大きいのか、或は音の響きからして冬(キヨウル)に対して軟らかい感じの恋歌(ヨンガ〉にぬくもりと、ときめきの心をこめたのかも知れない。ハングルを生かじりの私が云うのは気が引けるが、あえて云うならば、音楽形式のこの「ソナタ」と云う言葉は、ハングルに当てはめると最後のタが激音(例えばッタのような)になるので軽い音で終わると云うわけには行かないように考える。そのせいかどうかはわからないが、このような時あまり広く使われないのかと勝手に想像している。もっとも、韓国の現代(ヒヨンデー)自動車が出した普通乗用車の名前でSONATAと云う名の車種があったと思ったが、車の場合だとテンポがやや早くて発音にも或程度力強さがある言葉は打ってつけなのかも知れない。米国流で発音したりすると又感じが違うのかとも思う。最近の情報によると、現代の車のヒュンダイ ソナタは、本年1月デトロイトモーターショー05に新型で発表された。やさしい形のデザインと高品質と云うのがアピールのようである。米国アラバマ州モンゴメリーのヒュンダイ工場産で、エンジンは2.4リットルと3.3リットルのものとで少し大きめだが、日本のミドルサイズのセダンと競合することがあると思う。外野から見ると例えば和音(アコード)とソナタの競いあうような形になると云うことであろう。車のほうのソナタも韓国パワーが爆発するかもしれない。
 冬ソナに出演している俳優が又美男美女で、韓流に云うならば花美男(コンミナム)、花美女(コンミニヨ)と云う所らしい。昔、南男(ナンナム)北女(プクニヨ)と云う様な言葉を聞いたことがあった。近年スポーツの応援に来日した北の美女応援団には驚かされたが、こうして見ると南の美女もなかなかのもののようである。冬ソナは、私が苦手の部に属する単なるメロドラマかと思って、見るのもツマミ食いのような程度だった。メロドラマと云う言葉は、手元の英和・和英が一緒になったお手軽辞書でみると、「感傷的通俗劇」と何かバッサリと云った感じの訳でのっている。しかしこのドラマにはいささか失礼な言葉のようで、辞書のこの言葉の近くにあるメロウなドラマなのだろうか。
 私にとって韓国の映画が大変な力を持って来そうな予感があったのは1993年作の、日本では風の丘を越えて一という副題のある「西便制」(ソピョンジエ)を10年位前に見た時からであった。韓国にはパンソリと云う18世紀始めに全羅道中心に発展した口伝の伝統藝能がある。コラムニストの丸山正樹氏によると「口唱者ひとりと伴奏のように太鼓を打つ1人の鼓手で行う1人オペラのようなもの」とある。この映画はパンソリを教えこもうとする親、その養女、弟の間に強烈な生の恨(ハン)のただよう、魂をゆさぶられる感じのものであった。これはイム・グオンテクさんと云う監督の作品であったが、あまり知識のない私は最近秋田さきがけ新聞の1月5日付の夕刊をみて今ごろになって驚いた。同じ監督が2002年カンヌ国際映画祭で「酔画仙」と云う映画で監督賞を受けていたのを知った。現在は韓国の巨匠と云われているようで、さすがに力のある人だった訳である。早速その「酔画仙」を見てみた。それは丁度、韓国が外国の干渉を受けているような時代の、あやうさが漂う世の中で、酒と女を力としてその支えで絵を描く画家の恨(ハン)の生を通じて、大きくは国の恨(ハン)の心が流れているのを感じさせるものであった。これも又魂のこもったスケールの大きな映画とみた。他にも最近カンヌでグランプリを獲得する韓国映画があったようで、韓流の力は益々高まるかのようである。しかし私にとってはやはり「西便制」のインパクトの方があまりにも強かった。それは昔若いころに見た黒澤明監督のさまざまな映画で、従来の巨匠と云われた日本の監督さん達のものと較べて、その快よいテンポやプロットの流れに新鮮な驚きと共感を覚えた時と同じ感じであった。
 今度の冬ソナの監督のユン・ソクホさんは、四季一春(ポム)、夏(ヨルム)、秋(カウル)、そして冬(キヨウル)の中で若者の恋や愛の世界を中心にドラマを描いて行くようである。そしてその恋の成行き、道程など日本人にとっては意外な差や新鮮さを示してくれたように思われる。私は愁嘆場が長く続くのを見るのは苦手であるが、この監督の扱い方は上手のように思う。ただ心なしか同じ東洋人として見れば日本などと似ていて、涙の場面が少し多め、長めに感ずるところがあるみたいである。しかし、俳優も涙のシーンの演技など仲々うまいのではないだろうか。
 冬ソナの中のぺ・ヨンジュンさんは、凛としてしかも他人特に異性にやさしい思いやりを感じさせる役柄と本人自身の持つ感じと重なって多くの日本人女性の心をとらえ、「ヨン様」として爆発的な人気を増幅して行ったのかと思う。彼は1972年8月29日生まれの身長180cmとの事である。10年位前から韓国にも現れた若い奔放なX世代より、まだ儒教的精神の影響を秘めている感じである。名前は漢字では裵・勇俊(ぺ・ヨンジュン)となるようで私の偏見ではむしろたくましい武士のような感じを名前からは受ける。何れにしろ国としての過去からのわだかまりのことが頭にあったとしても、素直に韓国の俳優や人々にあこがれ、そしてその心や風物の美しさに感動して熱中するのは大いに結構だと思う。ただ少し心配なのは、冬ソナの名所に多くのこちらからの観光客が訪ねているようであるが、韓国の人々も観光に出かける場所が多いと思うので、あまり肩で風切るような勢いでないようにして楽しんでもらいたいと思う。恐らく向こうの人々は訪れた外国の客に配慮して遠慮したりする場面があるかも知れないので、こちらもヨン様を見習って他人に思いやりの心をもって歩いてほしいと考える。
 今韓流と云う言葉は、韓国の流儀とか考えの意と、韓国文化が溢れて流れこんでいると云う双方の意味があると思う。今年2005年が日韓国交正常化40周年と云うことで友好年となった。切にその実があがることを祈りたい。
 今回は日ごろ尊敬する学者の真木正博先生よりバトンをお渡し戴いてとても嬉しかった。
 次は高名なスポーツドクター湊昭策先生にバトンタッチ願えれば幸いである。
 
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