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<ペンリレー>

発行日2004/06/10
遠山医院  遠山卓郎
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増感紙
 
 増感紙と言ってもお解りにならない先生方もおられるかも知れませんが、X線撮影にとっては極めて重要であります。私は1年半前に増感紙、フィルムをオルソシステムに交換して感じたことを述べさせていただきます。
 1895年レントゲン教授が蛍光体を使いX線を発見し、1897年にエジソンがタングステン酸カルシウム蛍光体を使い、X線画像用スクリーンの開発に成功している。以後タングステン酸カルシウム蛍光体を使った直接撮影用増感紙が使われてきた。
 1970年代に酸硫化ガドリニウム蛍光体を使って緑色発光増感紙と緑感性フィルムを組み合わせるオルソシステムが開発され、胸部撮影では次第に主流になってきている。
 蛍光体をモード化した増感紙でフィルムを挟むことにより人体を透過してきたX線を光と変換して、フィルムを効率的に感光させることのできる増感紙を使用することによりX線量が約1OO分の1に減少すると共により鮮明なX線写真を得ることができ、被爆量は大幅に軽減される。

 増感紙の種類:一般的に蛍光体の種類により分類するが、最近はフィルムとシステム適応性が中心になっている。
①レギュラー(青感紙)フィルム用増感紙
  蛍光体はタングステン酸カルシウム(CaWO4〉が一般的であり最も多く使用されている。
②オルソマチック(緑感性〉フィルム用増感紙
  蛍光体が希土類系のテレビウム活性酸硫化ガドリニウム(Gd202S:Tb)が主体として使わ
  れているが、メーカーにより多少の差があるが発光色は緑色である。
③レギュラーとオルソマチックを併用した蛍光増感紙
  二層構造で上層にタングステン酸カルシウム、下層に希土類蛍光体を使用した特殊
  なもの。

 増感紙は大別してタングステン系と希土類系に分けられ、希土類系はタングステン酸系に比べてX線の吸収が大きく、X線から可視光への変換率がタングステン系の5%に対して希土類系は15~20%と大きい。そのため同感度のタングステン系と希土類系増感紙を比較した場含、希土類増感紙の方の蛍光体層を薄くすることができることから、鮮鋭度が優れているという長所がある。
・・よい胸部X線写真とは一
 被写体のもつ病的情報を忠実に描出された写真であり、診断目的に合ったコントラストを有し鮮鋭度の高い写真である。肺血管系、下行大動脈、縦隔、心臓、肋骨、鎖骨などの骨組織ができるだけ邪魔にならない適度の濃度をもって重なり合って鮮鋭度の高い、情報の多い写真のことである。
【撮影条件】
 オルソシステムの管電圧は80~120kVp位で、散乱線除去用グリッドは10:1~12:1を使用し焦点・フィルム間距離を180~200cmと半影の小さい心陰影も実像大に近い方がよい。
 撮影時間は呼吸停止させても心拍動によって肺血管のボケが生じない様にO.05秒以下の短時問撮影が望ましい。
 これらの条件で希土類蛍光増感紙を用いて胸部を撮影すると、骨組織と軟部組織の濃度差は小さくなるが、同時に常にX線吸収の著しく小さい空気が存在するため、多数のシルエットの重なりとしてとらえることができる。
【増感紙の寿命1
①蛍光体そのものの発光効率の経年的変化は少ないが、X線刺激による性能低下があり交換不要というものではない。
②増感紙の保護膜の表面の汚れ、ゴミ等の付着した場合、写真にムラとして多数でてくる。増感紙専用クリーナーを含ませたガーゼで拭き、柔らかい布で軽く拭いてよく乾いた状態で使用すること。
③増感紙の折れ、キズが発生したり変色した場合は交換する必要がある。
④増感紙の交換は一般カセッテで10000枚とされている。
以上の観点から一般の増感紙を使用されている先生方に是非オルソシステムでの胸部撮影をして診断に役立てて頂くことをお願いいたします。
 次は濱島昭雄先生にお願い致します。
 
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