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<ペンリレー>

発行日2003/12/10
中通総合病院  久保田奉幸
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糖尿病(生活習慣病)の日常診療
 
 糖尿病は生活習慣と遺伝因子によって発症その治療や予防は生活習慣の是正、行動の変容、自己管理の重要性が強調されています。社会医学的に見れば疾病の発症は社会的要因が重要であり、自己責任を中心とした自己管理とする考え方に異を唱える主張がありますが、自律的な自己管理がどれ程行われているかは無視できません。必要最小限に近いカロリーを算定し、それを守って行くことは中々大変な事です。歩け、歩けの運動が浸透して、大きな流れになっています。血糖値が高くなった理由を聞くと、最近運動をしなくなったという答えが先に返って来ます。この遣り取りが何回か行われるわけですが食事の量も大切ですね、という話を始めます。患者さんのやる気の変化を察知し、評価し、行動に転換し、維持していくためには、お互いの粘り強さと時間が必要です。腹8分目の食事を継続する事はかなり困難です。一家団欒の中で満腹感を味わい、また、付き合いを大切にする風潮やレジャーを楽しむ時代の中で、参加しても摂取カロリーを気にしていたのでは楽しみも半減してしまいます。問題に気づき、モチベーションを保ち、coping skillを向上し、実践することの困難さを理解し、支持し、更に1歩前進を一緒に考える姿勢が医療スタッフに要求されますが、そうは行かないのが常です。患者教育の大切さが強調されます。食事指導を行う時に患者さんが記入してくる3日間の内容は指示カロリーよりかなり少なくて、このカロリーで血糖のコントロールは高くなる筈はないと考えて話を聞いてみると、調査の3日間は普段より少なく食べたとか、間食は記入しなかったなどという答えが返ってくる事が多くあります。反面、そんなに多く食べてはいないと主張する時には、医師に疑われて面白くないという不信の気持ちもあるのではないかと考えてしまいます。付き添ってきた家族は医師の言うとおりという表情で頷いたりします。日常生活のなかで家族と患者の遣り取りが行われているのが覗えます。こんな時には患者さんと一緒に生活してみるのが最善の方法だと思うわけですが、病院での診療は個々の患者さんの生活や社会的経済的実態を知るに乏しく、検査値や診察の所見だけで病人の生活実態を充分把握していないのではないか、限界があるのかなと反省します。
 糖尿病の診療は多職種が夫々の専門性を生かして、統合的、総合的な診療が強調されています。11月8日に仙台で行われた糖尿病学会地方会では、2年前発足した糖尿病療養指導十の発表演題は地方会演題の3分の1を占め、しかも、患者の生活の視点から、QOLを向上させ、療養の質を豊かにする演題が多く、そのパワーとチャレンジ精神に触発されました。病院の彼(女〉らへの期待が一層膨らんで来ました。意気消沈する事も多いが期待も多い診療の日々です。
 
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